内容の記述を含む『シロメ』の感想

映画『シロメ』
池袋・シアターグリーン
2010年8月14日(土)11:30

まず、僕は怖かった。始まってすぐから怖かったし、80分の上映時間中75分までは怖かった。途中、怖さに耐えきれず「勘弁してくれー!」と思って時計を見たら20分しか経っておらず、気絶しそうになった。さらに怖すぎて気持ち悪くなった時もあった。見てる時は当然のように怖いと思ったんだけど、怖かったと言った人が僕以外にまだ一人しかいないので、怖く感じた理由は後で書く。
それから、映画としておもしろかった。「売れてきたアイドルで映画作るからその子たちが映ってればいいんでしょ」っていう単なる「ももクロの映画」ではないと思った。実際ももクロちゃんが出てなかったら映画館にしろDVDにしろわざわざ見ないけど、例えばテレビでやっていて見たとしたらおもしろかったと思うと思う。
フェイクドキュメンタリーというと、『ブレアウィッチプロジェクト』も見てないし、それどころかフジテレビの『放送禁止』という番組を一回だけ見たことあるだけで、よく知らない。ドキュメンタリー風に作ったフィクションの映画という理解で見た。この映画は「リアルフェイクホラー」というコピーがついてるけど「リアル」というのは宣伝文句でフィクションなのだろうという認識で見た。フィクションということは脚本があり、台本に従って芝居を撮影するもの、という想定で見た。
テレビ番組の企画ということで、曰くつきの場に行くことになるももいろクローバー。最初にディレクターから企画の説明があり、その場所に詳しい人物から話を聞く。まずこのくだりは普通だったらおかしいというか「仕込みでしょ?」と思うと思う。僕はフィクションという認識で見ていたので、その世界のルールに従って「これはやべぇ状況だな、マジでこの企画進めるのかよ」と手に汗を握った。この時点で、「おいやめろ、ディレクター」と思ったわけだけど、「おいやめろ」「やめようよ」「やめてくれー」は80分間で1000回くらいつぶやいた。「ももクロちゃん、『はい』って言っちゃダメー!」「川上さん、なぜこの仕事受けた!今からでも下りよう!」と思った。
で、何故かスタジオだかレッスン場にお泊りで撮影することに。これも、まぁ設定あるのか知らないけどまだその場所にも行ってないし、夜に何かするわけでもないから、その番組上必然性のあることではないと思うけど、フィクションなので別にそれで良いと思った。だからホラー映画的に、何か怖いシーンありそうでビクビクした。ここら辺で、あかりが「私は霊感ある」とか主張したり、夏菜子が夜中起きたり、あかりが腕上げたり、翌朝「天井に白目がたくさん見えた」と夏菜子とあかりの2人が言ったり、完全にフィクションだと思う。だからこそ僕はその世界のルールに従って「うわぁ、マジやべぇじゃん」と恐怖を感じた。
目的の場所に着くと、偽織田無道と偽ギボ愛子が出てきてこれまたおかしいし、またゲロ吐いた怪談師出てくるし憑依されるし、それで収録止めないし、普通に考えたらおかしいというか「これぜってー仕込みだろ(笑)」と思うと思う。ここが一番「おいやめろ、ディレクター。川上さん断われよ!」と思った。偽ギボがギャーと叫んだり鐘の音が聞こえなくなったり、ってのも同じくおかしいし定石通り過ぎるけどマジやべぇぞと手に汗握った。
最終目的地での、歌と、お願いする時と、お願いした後のくだりは、僕も、怖くなかった人も、映画つまんなかった人も、ももクロファンは感動するところだと思う。彼女たちは本気で言っていた。映画にしろ現実にしろ、映画がフィクションにしろリアルにしろ、とにかく彼女たちの本気の気持ちが伝わってくるシーンだった。そしてその後のオチ。僕は本気でホラー映画として見ていたので、「最低なオチだな(笑)」と思ったけど、主題歌が『ココ☆ナツ』だということでまぁこういう感じになるだろうと思っていたから、「まぁいいか(笑)」と思った。
再三言っているように、僕はフィクションと思って見たので、お願いするシーンやオチのシーンで、本気で号泣して一切の嘘臭さがない芝居だと思ったから、「ももいろクローバーの本気はすごいな」と思って改めて感動した。本気で紅白出たいと願ってる感動に加えて、本気の芝居はすごいんだなと思った。
そんな訳で怖がりながら見たし、映画としてもおもしろいと思った。というのが僕の結論。
さて一方、「ももクロちゃんは本気でドッキリに騙されてたんじゃないの?」とも考えられる。制作側とマネージャーたちも本気で仕掛けてひっかけたと。とすると、彼女たちは説明を受けた時点から、これまた本気で怖がっていたように見えるし本気で行きたくないと思っていたと思う。とすると、怪談師が憑依されても中に入り、「紅白に出たい」という一心で廊下を歌いながら歩き、鐘の音が聞こえなくなっても進み、夏菜子が勇気を出して、本気で願えば死んだりしないと思って扉を開けたわけだから、そんなのはエモすぎる。それは泣くのも当然。この場合で考えると、映画の世界の外にいる観客としては、シロメ伝説も全部ウソなので怖くないのも当然だけど、感情移入してももクロちゃんの気持ちになって見たら、死ぬほど怖いと思う。
あとさらに、ドッキリは本気で仕掛けたけど、ももクロちゃんたちは本気で騙されてはいなくて、「これドッキリ臭くない?あの怪談師(笑)とか絶対仕込みだよねヒソヒソ」っつって企画に乗っかってたとしたらタレントさんとして素晴らしすぎる!まだバラエティ慣れしてるわけじゃないだろうし、まだ若いし、それであんなに思いっきり引っ掛かった振りしたままやってたとしたら6人とも天才だろwww ただこの場合で考えると、ドッキリも映画もクソ茶番もいいとこなので違うと思いたい。
今書いたドッキリかどうかについての話の一部は、怖くはなかったと言っていた友達とも話した内容で、ここら辺はリアルフェイクホラー映画としての王道の楽しみ方だと思うので、そういう意味でもこの映画はただの「ももクロの映画」じゃなくて映画として面白かったなぁと思った。そこら辺とか、監督がやっぱり名のあるすごい人だからさすがなんだなぁと思った。僕は思いっきり怖がって、ストレートに楽しめて、完全に予想外に満足だった。
(15日25時追記)
よく考えたら、全部順撮りとは限らないからドッキリの部分はホントにドッキリでももクロちゃん信じてて、お泊りとか、控室になぜかメンバーだけ入ってコメント撮りとかの部分は、後からわかった上で撮れるからそういうことかもしれない。そういう気がしてきた。もう完全に思うつぼで思いっきり楽しんでるけど、フィクションでどうのこうのっていう部分、全部説得力なくなった…